阿良々木暦的な文章を真似て架空の化物語シリーズの出だしを書いてみた

彼女の記憶は雪と共にあり、凍えそうな寒さと差すような彼女の眼差しを僕は鮮明に思い浮かべることができる。 しかし、彼女と僕が出会ったのは真夏のうだるような暑さの中だったし彼女と別れたあの日も、アスファルトが蜃気楼に揺れてすべての輪郭があやふや…

終わった事のように語ると気が楽になる。

「日本の政治は腐敗し行き詰まっている」「日本経済が破綻しそうである」と言われると何か複雑で難しい現実がそこに横たわっているような気がするが、100年後の教科書に「日本国は1990年以降傾き始め衰退の一途を辿り、2050年の世界恐慌を起に崩壊した」…

迷い

「好きなものがある」それはこの世への未練である。公開を楽しみにしている映画、続きが気になる漫画、好きな小説家の新刊。そういったものが生きる力に繋がる。 しかし、年を経ると共に、僕の「好きだ」という想いは枯れていった。小説のページを捲る手は重…

Calla Soiled氏の曲「もしも星屑が泣いたとして」にポエトリーリーディングの歌詞をつけました。(個人的にやっただけでオフィシャルでもなんでもありません)

もしも星屑が泣いたとして もしも星屑が泣いたとして 人知れずこぼれ落ちた涙は やがて風のなかで宙に消える星と星を線で結んで 祈りを込めて歌うとして 人知れず紡がれた音は やがて風のなかで宙に消える 誰にも届かない物語を書き続けたとして 声にならな…

しあわせはトマトのかたち

「物事には必ず原因があり、それによって結果である現在が確定する」という考え方を因果律と言うらしいけれど、わたしを取り巻く環境が一体何を原因として成り立っているのか、いくら考えてみても分かりそうにもない。 冷たい沈黙が降り積もった我家の食卓も…

坂本真綾と菅野よう子 〜1997〜

「そのままでいいんだ」という曲が坂本真綾のデビューアルバムに入っている。 これを聞いた当時、僕は16歳だった。 背伸びしたり、大人ぶってみたり、色んなものに引っ張られたり、そのくせ自己主張だけが強かったあの頃。坂本真綾が不器用に大切にささやく…

人間は体は冬眠しないけど心は冬眠しているんだ。

春の柔らかな風に包まれると胸の奥から変なのが大量に湧いてくる。それは受験の前日のような得体の知れない焦燥感で、幼い頃に味わった遠足前のわくわくにも似ている。 特別な何かが始まる前に感じる。あのよく分からないやつ。 南風は始まりの合図。人や場…

incriment    -music by natant-

風景は切り取られた瞬間その意味を変える。僕が手渡した写真は僕の知らない景色となり帰ってきた。 街角に立ち 耳を澄ましてみる やがて 雑音が意味を成す 不揃いのリズムはいくつもの足音 ざわついたノイズは誰かの言葉 加速と減速 エンジンの唸り その奥に…

狭間の景色

東京ビックサイト。 コミックマーケットが開かれる場所であり、それゆえに一部の人たちにとっては大きな意味を持つ場所である。 しかし、コミケが行われるのは年に二回。それ以外の日は何が行われているかというと、企業による展示会が9割を占める。IT、福祉…

終わらない日常の中で

物語の落しどころというものを石黒正数という作家は探し続けていたのだと思う。 悪の組織が滅亡したあとのヒーローはどうすればいい?世界の終わりはどのように訪れれば面白いだろう?もし、唐突に共同生活をすることになった魔法使いの女の子がどんでもなく…

おかのうえ

その日、仲間たちの溜まり場となっている友人の家で一人きり僕は横になっていた。時刻は深夜12時を廻ったところ。外は小雨。水をはじく車輪の音が小さな暗闇を包み込む。 うつぶせになり目を閉じて耳をすませる。自分の体の重さ、体温の熱さを感じる。 ふい…

意味もないし理由もない 覚悟だけはある

俺は夜中に新青梅街道を自転車で疾走していた。 その日、友人に自分の勘違いを正された。俺の生き方を否定された。完膚なきまでに。同士だと思っていたのは俺だけだった。 自分の感情を捨てきれず、自分の目に写る世界を否定できず、大人になれないまま気が…