阿良々木暦的な文章を真似て架空の化物語シリーズの出だしを書いてみた

 彼女の記憶は雪と共にあり、凍えそうな寒さと差すような彼女の眼差しを僕は鮮明に思い浮かべることができる。
 しかし、彼女と僕が出会ったのは真夏のうだるような暑さの中だったし彼女と別れたあの日も、アスファルトが蜃気楼に揺れてすべての輪郭があやふやだった。
 あの夏、勘違いに勘違いを重ねて走り回った挙句にたどり着いた答えはあまりに救いようがなく、きっと僕は夏の暑さに浮かされてあのような大失態を犯してしまったのだ――僕の失敗に巻き込まれた彼女には本当に申し訳なく思う。
 彼女と僕の物語は初夏に始まり、秋を待たずして終わる。それはひと夏の気の迷い。どこからが失敗かと聞かれれば始まりから失敗であり、彼女と出会ってしまったことが僕の犯した最大のミスだったと言える。
 雪に覆われたアスファルトの上を歩きながら彼女のことを思う。儚くて、溶けてしまいそうなくらい、あやふやな存在なのに、すべてを覆い尽くす圧倒的な白。
 僕との物語はきっと彼女にとっては何もなかったと同義。白紙も同然。だから本当は僕は失敗さえまともに出来なかったのだ。
 だから、彼女に謝ることも、感謝することも今の僕にはできない。再び出会うことがあっても僕が「あの阿良々木暦」だと彼女は認識することさえできないから。
 今から語るのは白紙の物語だ。何の意味もなさないただの虚言だ。僕は夏の日に雪のような女の子に出会った。でも女の子は端から僕と出会ってなんていなかった。そんな滑稽な物語だ。