道景

人間は体は冬眠しないけど心は冬眠しているんだ。

春の柔らかな風に包まれると胸の奥から変なのが大量に湧いてくる。それは受験の前日のような得体の知れない焦燥感で、幼い頃に味わった遠足前のわくわくにも似ている。 特別な何かが始まる前に感じる。あのよく分からないやつ。 南風は始まりの合図。人や場…

狭間の景色

東京ビックサイト。 コミックマーケットが開かれる場所であり、それゆえに一部の人たちにとっては大きな意味を持つ場所である。 しかし、コミケが行われるのは年に二回。それ以外の日は何が行われているかというと、企業による展示会が9割を占める。IT、福祉…

おかのうえ

その日、仲間たちの溜まり場となっている友人の家で一人きり僕は横になっていた。時刻は深夜12時を廻ったところ。外は小雨。水をはじく車輪の音が小さな暗闇を包み込む。 うつぶせになり目を閉じて耳をすませる。自分の体の重さ、体温の熱さを感じる。 ふい…

意味もないし理由もない 覚悟だけはある

俺は夜中に新青梅街道を自転車で疾走していた。 その日、友人に自分の勘違いを正された。俺の生き方を否定された。完膚なきまでに。同士だと思っていたのは俺だけだった。 自分の感情を捨てきれず、自分の目に写る世界を否定できず、大人になれないまま気が…