坂本真綾と菅野よう子 〜1997〜

 「そのままでいいんだ」という曲が坂本真綾のデビューアルバムに入っている。
 これを聞いた当時、僕は16歳だった。
 背伸びしたり、大人ぶってみたり、色んなものに引っ張られたり、そのくせ自己主張だけが強かったあの頃。坂本真綾が不器用に大切にささやく「そのままでいいんだ」という言葉に救われたり憤ったり疑問に思ったりたいそう振り回された。

 作曲は菅野よう子、作詞はGabriela Robinによるもの。当時はまだGabriela Robinの正体は謎だったためそのまんま受け取り外国人が作詞したものなんだろうとか適当に考えていた。
 菅野よう子の変名という事実を知ってから再びこの歌詞を見て二人の出会いにまつわるエピソードを思い出した。
 菅野よう子は初対面の坂本真綾に「反抗期はもう終わった?」と尋ね思いっきり睨みつけられたそうだ。そんな思春期まっさかりの彼女に菅野よう子が贈った始めてのことば。
 あの頃の坂本真綾がよくぞ素直に歌ったものだと思いつつ、やっぱりなんかほっこりしたんじゃないかなぁとも思う。
 そして、いま改めて聞きながらこのエントリーを書いているのだが、なんだか坂本真綾の声は震えて泣きそうなように聞こえるし後半はなんかわくわくしているようにも思える。

 一人の少女の未来をなんの根拠もなく保障する飛んでもない歌詞をよくぞ本人に歌わせたものだと驚きつつ、よく考えたら最後のほうは少年アリスの先の坂本真綾の姿のような気もする。そりゃあ何か感じたから二人はずっといっしょにやっていたんだよな。

 ぶっ飛んだ大人たちと孤独を愛する勝気な少女のコミュニケーションのすべてが収録されていると思うと、改めて坂本真綾のCDはすげぇと思う。